ストーカー被害

ストーカー被害

ストーカー問題

ストーカーの本来の意味は、つきまといをする人のことです。

そして、ストーカー規制法で規制の対象となっているのは、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情や、それが満たされなかったことに対する怨恨(えんこん)の感情を充足する目的で、特定の者やその関係者に対して行われる「つきまとい等」です。

そのため、債権者が取り立てのため債務者の家庭や職場を訪問したり、メールの送信を繰り返すことは、ストーカー規制法の対象に含まれません。同じ理由で、興信所の探偵が依頼者の求めに応じて、対象者の行動を監視したり尾行することも、法律上のストーカー行為には当たりません。

警察庁のまとめによりますと、昨年(2016年)に全国の警察が相談を受けたストーカーの件数は2万2737件で、ストーカー規制法が施行された2000年以来、最も多い相談件数でした。

ストーカーから殺人とか殺人未遂に発展事件が次々発生しています。規制法が施行される前年(1999年)に起きたのが桶川ストーカー殺人事件です。規制法が施行された後に発生した事件としては、2011年の長崎ストーカー殺人事件や2012年の逗子ストーカー殺人事件が著名です。

記憶に新しいところでは、昨年(2016年)5月に小金井ストーカー殺人未遂事件が発生しています。
この事件は、女性のファンを自称する男がツイッターなどのSNSで、女性に対する書き込みを執拗に続けた挙句に発生した殺人未遂です。
この事件を受けて、2016年12月6日の衆議院本会議では、「SNSを規制の対象とし、さらに、ストーカー行為を処罰するには告訴を必要としない。」という内容のストーカー規制法改正案が、全会一致で可決されました。

ストーカー問題は、根が深くならないうちに適切な対応をとることが大切です。

ストーカーの気配を感じたら

ストーカーの気配を感じたら、芽が小さい蕾のうちに、最寄りの警察へ相談することが重要です。

公園で血まみれの人が倒れていたとすれば、警察は放っておいても捜査をします。しかし、ストーカーに関しては、被害者が黙っている限り、警察は何もしてくれません。

ストーカーに対する警察の対応も、最近はかなり改善されてきました。初期の段階では、相談を受けた生活安全課の警察官が、つきまとい等をしていると思われる相手に対し、そのような行為をやめるように注意の電話をしてくれたりします。

この段階では、あくまでも行為の是非を問わない口頭注意ですから、ストーカー規制法に定められている警告や禁止命令のように法律上の義務につながる措置ではありません。

深刻なストーカーも、最初から執拗につきまとい等を繰り返すことは、まれです。初期段階で警察官からの口頭注意を受ければ、「この人にチョッカイかければ、すぐ警察に通報される。」と分かります。根っからの変質者でない限り、ごく初期段階で手を引く場合がかなりあります。

被害者としては「相手に逆上されると怖い。」と考え、警察への相談を躊躇しがちです。その気持ちも分かりますが、被害者が助けを求めなければ、警察は介入できません。

被害者の一番の目的は、ストーカー行為をやめてもらうことです。初期段階における警察への相談は、そのための第一歩であって、相手を処罰してもらうためではありません。不安を解消するためにも、早めの相談をしてください。

警察の対応はどのように改善されるか

平成23年12月に長崎県西海市で元交際相手だった女性の実家で女性の母親と祖母が殺された事件、平成24年22月に発生した逗子ストーカー殺人事件、平成25年10月には東京都三鷹市で元交際相手の男が帰宅を待ち伏せての女子高校生殺人事件が発生するなど、取り返しのつかない重大事件が相次いでいます。
そのたびにストーカーの被害者から相談を受けていた警察の対応が問題にされてきました。

このような問題意識が高まり、平成25年12月13日、警察庁は、ストーカー相談への対応を強化する「ストーカー・DV総合対策本部」を新設しました。
同時に。全国の警察本部にストーカー対策の専門チームを設けることを指示しました。

それによりますと、被害者の保護という面からは、相談を受けた段階で危険度を独自に判定するチェック票を活用します。

そして、危険度が高い場合は、相談者に避難を強く勧めたり、警察によるパトロールを強化し、警戒態勢を敷きます。

危険度が低い場合でも、相談後に警察官が定期的に現況を電話で尋ねる「安心コール」を実施して、相談後の被害者の安否を確認します。

危険度が薄い相談者には、相談を受けた警察官が相手方に電話で「相談者を不安がらせる行為をやめるよう」口頭注意します。そして、やまらないときは刑事処分を求める告訴を促すようにします。

所轄警察署においても、従来は生活安全課が対応していましたが、今後は脅迫事件などを扱う刑事課が生活安全課と同席して相談を受けるようになります。

また、ストーカー行為者(加害者)への対応も改善されます。
従来は、警告や禁止命令など規制法の手続きを優先していたようです。
これからは、警察本部の専門担当者が所轄警察署を指導・応援し、加害者の逮捕を最優先させて、重大事件になる前に検挙する方針になります。

ストーカーにはどんな種類があるの

ストーカー規制法では、「つきまとい等」を「反復して」行い、その相手に「不安を覚えさせる」行為をストーカーに該当すると定めています。

なお、「誰が」「どのような目的で」については、別稿の「どんな加害者が法の規制を受けるの」を、「誰に対して」については、別稿の「規制法で保護してもらえるのはどんな人」のコーナーをご覧ください。

「つきまとい等」に該当するのはどのような行為でしょうか。ストーカー規制法は、次の8種類がこれに該当すると定めています。

➀ 住居、勤務先、学校その他通常の所在場所での付きまとい・待ち伏せ・進路立ちふさがり・見張り・押しかけ

② 監視している旨の告知

③ 面会・交際・その他義務のないことを行うことの要求

④ 著しく粗野な言動、著しく乱暴な言動

⑤ 無言電話、連続した電話・ファックス・メール

⑥ 汚物・動物の死体等の送付

⑦ 名誉を害する事項の告知

⑧ 性的恥辱心を害する事項の告知

法の規制を受けるのは、上記行為を「反復して」行った場合です。二日前に連続して10回も「返事をください。」というメールがきた場合は、つきまとい等には当たりますが、二日前にあっただけで、昨日と今日は止んでいますから連続していても「反復して」とは言えないでしょう。

法が規制しているのは、つきまとい等をして、相手に「不安を覚えさせる」ことです。ストーカー規制法は、単なるつきまとい等を規制しているのではありません。相手が不安を感じない場合、たとえば相手も同意しているとか、さしたる痛痒も感じない場合までは、法で規制する必要がないからです。

つきまとい・待ち伏せは典型的なストーカー行為

ストーカー規制法は、住居・勤務先・学校その他通常の所在場所でのつきまとい、待ち伏せ、進路立ちふさがり、見張り、押しかけを「つきまとい等」に該当する行為のトップに掲げています。

やはり、これらが典型的なストーカー行為ということになります。

「つきまとい」は、被害者の後をつけたり、被害者の身辺に群がって立ち退こうとしないなど、被害者に不安又は迷惑を覚えさせるような仕方で、被害者につきまとうことです。

「待ち伏せ」は、文字どおり被害者の住居や勤務先など被害者が行き来する場所で、被害者に不安又は迷惑を覚えさせるような仕方で、被害者が現れるのを待ち構えることです。

「進路立ちふさがり」は、被害者が進む方向の前に立ち、被害者に不安を覚えさせるような仕方で、進路をふさぐ行為です。

「見張り」は、主に視覚等の感覚器官によって、被害者が不安又は迷惑を覚えるような方法で、一定時間継続的に被害者の動静を見守ることです。
物陰から被害者の動静を監視する場合や、やや距離をおいた所から双眼鏡で見守りを続ける場合が、見張りに当たります。
裁判例として、「被害者が在宅しているか否か、転居しているか否かなどを観察する行為が、被害者の住居付近で行われる場合は、被害者に対し、その住居の平穏が害され、行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるようなものであることは明らかである。」旨、判断されたものがあります。

「押しかけ」は、被害者が在宅しているかどうかを問わず、住居等の平穏が害されるような態様で行う訪問であって、社会通念上容認されないものを指します。
裁判例として、「被告人が立ち入ったのは被害者の居住する集合住宅の被害者宅付近の通路であり、同所が被害者の住居そのものではないにしても、被害者の通常所在する場所に当たることは明らかであるから、被害者の意に反してその場所に立ち入った被告人の行為は、押しかけに該当する。」と、判断したものがあります。

ここで「相手方に不安又は迷惑を覚えさせるような仕方」について触れておきましょう。当該行為の時点で相手方がそれを認識しているかどうかを問わず、相手方が当該行為を認識した場合に、相手方に不安又は迷惑を覚えさせるようなものかどうかという観点から判断されます。

監視している旨の告知とは

ストーカー規制法は、規制の対象となる行為の2番目に、「その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、または知り得る状態に置くこと」を掲げています。実に陰湿なストーカーです。

例えば、「俺はお前をいつも監視しているぞ。」などと、言葉やメールであなたに告げることが、これに当たります。

具体的には、

➀ その日の服の色やどの店で昼食をとったかなどをあなたに告げて、監視 していることを気づかせる。

② あなたが帰宅した直後に「お帰りなさい。」などと電話する。

③ あなたがよくアクセスするインターネットの掲示板に、その日のあなたの行動の一部を書き込んで、あなたを監視しているように思わせる。

④ なたの自転車の前カゴに、あなたの行動を監視しているように思わせる内容のメモなどを置いておく。

などがあります。

この手の陰湿なストーカーを防ぐためには、ストーカーの気配を感じたときは、住居や学校・勤務先などの出入りの際に周囲を見渡し、ときどきは振り返るなどして、不審な気配がないかどうかを確認しましょう。
また、女性の一人暮らしの場合は、磨りガラスの窓にもカーテンを取り付け、カーテンは厚手の物を使い、特に在宅中はカーテンをきっちり閉めるようにして、外部から室内の様子が分からないようにしましょう。

もし、上記①から④のようなことがあったときは、すぐ最寄りの警察に通報して、深刻な事態になる前に対応してもらうことが大切です。なお、警察に通報するに当たっては、あなたが加害者から告げられた内容をメモするとか、メールやネットの書き込みであれば、それを保存するのはもちろんのことプリントアウトし、「いつ、誰から、誰に、どんな内容」の告知があったかを的確に通報できるようにしておく必要があります。

義務のないことの要求とは

ストーカー規制法は、規制の対象となる行為の3番目に、「面会・交際その他義務のないことの要求」を掲げています。

あなたが拒否しているにもかかわらず、面会や交際、復縁を求めてくる場合がこれに当たります。また、贈り物を受け取るよう、あなたに要求することもこれに当たります。

「義務のないこと」というのは、およそ問題となっているような要求をすることが、第三者から見て不当であると評価されるものを言います。要求することについて正当な権利を有している場合であっても、要求の仕方が権利の乱用に当たるときは、やはり義務のないことの要求に当たります。

「要求」の方法については、口頭や文書による伝達のほか、メールによる送信も含まれます。

ストーカーは、しつこく面会や交際を迫ってきますから、相手に対してはきっぱりと拒否の姿勢を示しましょう。それでも止まないときは、その要求行為は犯罪ですから、警察や信頼できる人に相談して、あなたの安全を防衛しましょう。場合によっては、警察に告訴して処罰してもらう必要があります。

粗野又は乱暴な言動とは

ストーカー規制法は、規制の対象となる行為の4番目に、「著しく粗野又は乱暴な言動をすること」を掲げています。

「著しく粗野な言動」は、手段を問わず、一般人から見て放置できない程度に強度な場合であり、場所がらをわきまえない、相当の礼儀を守らないぶしつけな言語または動作のことです。

例えば、あなたに大声で「バカヤロウ」などの言葉を浴びせるとか、あなたの家の前で大声を出したり車のクラクションを鳴らしたりすることが、これに当たります。

「著しく乱暴な言動」というのは、手段を問わず、刑法の暴行とか脅迫に当たらないものを含め、不当に荒々しい言語または動作のことです。

例えば、「一生呪ってやる。」など、あなたが不安に感じるような乱暴な言葉を手紙やメールであなたに伝えることが、これに当たります。

このようなストーカーから身を守るには、次のような対策があります。

  • ストーカーの気配を感じた人は、防犯ブザーを常に身につけておく。
  • 状況や相手の言動をメモし、できれば録音しておく。
  • 携帯電話は、いつでも110番通報できるようにしておく。
  • 自宅の玄関ドアは、防犯性能の高いものを取り付けておく。
  • ドアスコアやインターホンで来訪者を確認する。
  • 在宅中はカーテンをきっちり閉めておく。

そして、危険を感じたときは、防犯ブザーで助けを求めるか、携帯電話で110番通報しましょう。

実際に暴力を振るわれたときは、刑法の「暴行罪・傷害罪」に、物を壊されたときは「器物損壊罪」に当たりますから、警察の刑事課に被害届を出し、告訴して、加害者の処罰を求めてください。

名誉を害する事項の告知とは

ストーカー規制法は、規制の対象となる行為の7番目に、「その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと」を掲げています。

「名誉を害する事項」は、対象者の社会的評価を害し、名誉感情を害する事柄です。刑法の名誉毀損罪の程度にいたらない行為も含まれますから、事実を指摘することまでは必要ありません。また、公然性は要件とされていませんから、被害者に告げるだけでもストーカー行為になります。

例えば、「尻軽女」など対象者を中傷する内容を告げたり、その内容を電子メールで送信する場合が、これに当たります。

また、あなたを中傷したり、名誉を傷つけるような内容を記載した中傷ビラなどを、郵便受けに投げ込みしたりすることも、これに当たります。

ストーカーに対しては、対象者を中傷することで精神的に追い詰めようとしています。このようなストーカーには、中傷ビラや郵便は現物を、インターネットの書き込みは保存するとともにプリントアウトして、警察に届け出る。その上で告訴し、厳重なる刑事処罰を求めましょう。

インターネットを利用した誹謗中傷の場合は、被害が広がるのを防ぐため、削除を要請することができます。削除要請の手順については、「ネットで誹謗中傷を受け、困っています。」をご覧ください。

性的恥辱心を害する事項の告知とは

法が規制の対象としているストーカー行為は、「つきまとい等」ですが、その種類は8種類あります。

ストーカー規制法は、規制の対象となる行為の8番目に、「その性的恥辱心を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置き、又はその性的恥辱心を害する文書、図画その他のものを送付し、もしくはその知り得る状態に置くこと」を掲げています。

「性的恥辱心を害する事項」は、刑法のわいせつには当たらないものを含めて、相手が望んでもいないのに、性的に恥ずかしいと思う気持ちを起こさせ、精神の平穏を害することです。

例えば、わいせつな写真を自宅に送りつけたり、インターネットの掲示板に掲載することや、電話とか手紙で卑猥な言葉を告げ、対象者をはずかしめようとすることなどが、これに当たります。

このようなストーカーから送りつけられた物は、破棄しないで警察に届け出るときのために、保存しておきましょう。そして、このストーカー行為が何度も繰り返される場合は、警察に届け出て告訴し、刑事処罰を求めることを考えてください。

どんな加害者が法の規制を受けるの

ストーカー行為等の規制に関する法律(ストーカー規制法)では、特定の者に対する恋愛感情その他の好意を感情またはそれが満たされなかったことに対する怨恨(えんこん)の感情を充足する目的とする人の、つきまとい等の行為を規制の対象にしています。

通常は、男女の間で行われる「つきまとい行為等」がストーカー規制法の守備範囲ですが、同性愛にも適用されます。

上記以外の目的、たとえば、貸したお金を返してもらう目的でつきまとう人とか、夫の不倫相手の調査を妻から依頼された興信所の探偵が、夫の不倫相手の身元を調査する目的でターゲットを見張ったり追尾する行為は、規制法の対象にはならないのです。

年頃の若い人であれば、好きな人に逢いたくてその人がいそうな場所へ出かけたり、好きな人に何度もメールを送ったりしたことがあると思います。でも、相手の人が、あなたのことを嫌いでなければ、あなたをストーカーとは呼びません。

もし、あなたに逢いに来たり、メールを送ってくる人が、お付き合いを断らなければならない相手の場合は、あなたは、例えば前からお付き合いしている恋人がいるなど、きちんと理由を話してお断りしておくべきです。
ストーカーを防ぐ一番の対策は、相手の行為がストーカー規制法に触れないうちに、相手に理解してもらうようにしておくことが最も大切です。

普通の人であれば、好意をいだくあなたからの誠意ある話に耳を傾けてくれるはずです。それが、お互いに傷つかず、恨みっこなしで双方の幸せを願いあえるのではないでしょうか。

規制法で保護してもらえるのはどんな人

ストーカー行為等の規制に関する法律(ストーカー規制法)では、当該特定の者又はその配偶者、直系もしくは同居の親族そのほか当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対する「つきまとい等」がストーカー行為になると定めています。

たとえば、内縁の夫婦は「当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者」と言えますから、内縁の妻に好意を寄せる男が、内縁の夫に対し「つきまとい等」を行えば、ストーカー行為に該当し、内縁の夫は保護の対象になります。

では、ストーカーの被害者は規制法によって、どのような保護をしてもらえるのでしょうか。大まかに言いますと、規制法は次の4つを用意し、これによって被害者の保護を図る構成になっています。

(1)警告を発してもらう

「つきまとい等をして不安を覚えさせる」行為があり、かつ、それが反復継続する恐れがあると認められるとき、警察署長から警告を発してもらうことができます。

(2)禁止命令を出してもらう

警告を受けた者が警告に従わずに「つきまとい等をして不安を覚えさせる」行為があり、かつ、それが反復継続する恐れがあると認められるとき、公安委員会から禁止命令を出してもらうことができます。

(3)援助を求め必要な措置を講じてもらう

「つきまとい等をして不安を覚えさせる」行為があり、警察署長が援助の申出を相当と認めるとき、被害者の身辺警護などの必要な措置を講じてもらうことができます。

(4)刑事罰を与えてもらう

被害者が告訴し、警察が捜査し、検察官が起訴し、裁判所が有罪と認定した場合に、加害者は禁止命令違反の行為があった結果それがストーカー行為と認められれば1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます。また、禁止命令が出されていなくてもストーカー行為と認められれば(この場合は親告罪ですから告訴が必要ですが)6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられます。

面談禁止の仮処分の利用

ストーカー規制法の警告や禁止命令では対応できない被害の場合や、弁護士を交渉窓口とするよう相手方に通知しているにもかかわらず、ストーカーが直接被害者と面談をしようとしている場合は、民事保全法に定められている「面談禁止」の仮処分という手続きをとることができます。

また、ストーカー防衛対策として、殊に加害者の順法意識に期待できる場合は、いきなり警察への被害届や刑事告訴をするのではなく、弁護士名の内容証明郵便を出した後、それに相手が従わないときは、面談禁止の仮処分を裁判所に申し立て、裁判所からの命令をとることで、効果が期待できます。

この仮処分命令が出されたにもかかわらず、ストーカー行為がやまない場合は、脅迫罪、強要罪、偽計業務妨害罪などでの被害届や刑事告訴を警察に提出し易くなります。

なお、この面談禁止仮処分を取るには、命令の必要性と緊急性について、裁判官を納得させるに足りる主張と、それを裏付ける証拠の提出が必要です。そのため、被害者本人が申立を行うには難しい面がありますから、弁護士に依頼して申し立ててもらう必要があります。

ストーカー対策と住民票

執拗なストーカーから身を守るため、被害者が電話番号を変更したり、住民票を他所に移すということも行われます。あるいは、住民票を元のままにして、他所に転居するという対策も考えられます。

ただ、実際に住んでいる所に住民登録しておかないと、子供を小学校に通わせたり、母子家庭であれば母子手当てがもらえない、地域の国民健康保険に加入できないなどの不都合が起きます。

そのため、各市町村では、DV(配偶者暴力)やストーカー被害者の住民票と戸籍附票について支援措置がとられています。これは、被害者を保護するため、住民基本台帳の一部の写の閲覧、住民票写し、戸籍附票写しの交付について、不当な目的に利用されるのを防ぐ制度です。

具体的には、加害者からの請求に対しては、「不当な目的」があるものとして、交付せず閲覧もさせないことにしています。第三者からの請求については、加害者が第三者になりすまして請求することに備え、住基カードや運転免許証など写真が貼付されている公的機関が発行した身分証明書類の提示を求め、請求理由についても審査した上で交付することにしています。

この支援措置を受けるための手続きは、次のような流れで行います。

(1) 警察署や配偶者暴力相談支援センター(都道府県の婦人相談所がこの機能を果たしています)、福祉総合センターなど、地域の役所(住民登録している役所)で指定されている公的機関にストーカーやDVの被害を相談する。

(2) 相談した公的機関(警察とか支援センターなど)から「住民票の閲覧制限が必要」という内容の書類をもらう。

(3) もらった(2)の書類を地域の役所に提出する。= これで手続きは終了

なお、警察などへの相談は、引越し前が望まれます。引っ越した後の場合は手続きで時間がかかるため、その間に加害者に引っ越した後の住所を調べられてしまう可能性があるからです。

この支援措置が決定され、支援が実施されると、被害者本人が請求する場合も、公的機関の発行した顔写真の貼付された身分証明書類を提示しなければならないので、本人確認が厳格になります。そのため、代理人や郵送による請求は受付けてもらえません。

スマホでの動画自動撮影がストーカーになる

動画自動撮影アプリをインストールしたスマホを、好意を寄せる相手の居室にセットし、相手の行動が自動撮影された動画を自分のスマホに転送して見ていた男が、「見張り行為などをしたストーカー行為」で逮捕されたという事例があります。

使われたアプリは、音や動きに反応して自動で動画を撮影することができ、本来はペットや子供の様子を外出先から確認する目的に使われるものです。

ストーカー規制法第2条は、ストーカーに当たる行為を1号から8号まで掲げて規制の対象としています。その1号に「つきまとう」、「待ち伏せる」、「立ちふさがる」、「見張りをする」、「押しかける」、又は住居等の付近をみだりにうろつくことを挙げています

この中の「見張りをする」とは,住居・勤務先・学校その他・対象者が通常所在する場所の付近で見張る行為ですが,必ずしも肉眼で見張ることに限りません。少し離れた場所から双眼鏡で見張ったり、望遠レンズで動画を撮影することも、見張りをする行為に含まれます。報道によると、遠隔監視アプリを使った動画撮影にストーカー規制法を適用するのは、初めての案件だということです。

日進月歩の通信技術に伴い、見張りをする方法も簡単に発見されないようにと、アレやコレやと手の込んだものが使われてくるようです。どのように目新しい方法が登場しても、それが対象者の動きを見張るために使われる方法であれば、ストーカー規制法で禁止されている違法行為になります。

小金井ストーカー殺人未遂事件がきっかけで、SNSも規制対象に

SNS(フェイスブックやツイッターなど人と人をつなぐコミニュケーションのための通信サービス)とかブログへの書き込みによるメッセージを繰り返され、その挙句に襲撃されるという悲惨な被害が後を絶ちません。

こうした中で2016年5月、東京都小金井市で女子大生がが刃物を持った男に襲われる事件が起きました。

男は、事件の前からツイッターなどのSNSで執拗に女子大生へのメッセージを繰り返していました。

女子大生は、男からのメッセージを止めてもらいたいので、警察にも相談していました。
しかし、当時のストカー規制法では、メッセージの内容が違法なものでない限り、SNSの書き込み送信だけでは警察としても取り締まることができませんでした。

5月の女子大生襲撃事件の発生などをきっかけに、ストーカー規制法を改正する必要性が検討され、2016年12月6日改正法が成立しました。
改正されたストーカー規制法では、相手から拒まれているのにSNSやブログにメッセージを送信したり、書き込んだりすることを続ける行為が、規制の対象となる「つきまとい等」の中に追加されました。

また、この度の28年改正では、ストーカー行為をした者に対する罰則が2倍に強化されました。

具体的には、ストーカー行為をした者は1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられ、被害者からの告訴がなくても処罰できることになりました。
また、禁止命令に違反してストーカー行為をした者は2年以下の懲役又は200万円以下の罰金に処せられることになりました。

拒否してもツイッターやブログの書き込みなどで執拗にメッセージを送られる場合は、改正法施行後は明らかなストーカー行為ですから、早めに最寄りの警察に相談し、取り締まってもらうことができるようになりました。

ストーカー行為を繰り返す加害者に対し、「メッセージをこれ以上送り続けると、この人は警察へすぐ連絡するからヤバい。」と思わせることが、ストーカー行為を初期段階でやめさせ、深刻な被害を受けるのを避けるためには有効です。

進むストーカー対策

ストーカーによる被害が後を絶ちません。
根が深くなると被害者の生命や身体を害する重大な事件が起きています。このようなストーカー被害に歯止めをかけ根絶するため、警察における対応、国としての法整備の面で、年々ストーカー対策は進化しています。

警察庁は、ストーカーの違法行為を裏付けるのに役立てるため、被害者に高性能の監視カメラを貸与する取り組みを強化し、警察が玄関とかベランダに設置してくれます。
この監視カメラは、暗闇でも撮影できるため、夜間でもストーカーが室内を覗ったり、郵便物を取り出そうとするところを録画してくれる優れものです。平成28年度末までに全国で760セットが整備されるそうです。

警察は、帰宅させると危険が予測される被害者の避難先として、これまでの婦人相談所や民間シェルターのほか、新たに民間ホテルを無料で用意する取組みも始めています。

また、法律の整備という面からは、公明党がストーカー規制法の改正案を今年夏の参議院選挙後に召集される臨時国会に提出する方針だと報じられています。
改正案は、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)への書き込みを取り締まり対象に加えること、ストーカー行為罪を処罰するのに告訴が必要がないこととするなどとなっています。

このように、ストーカー対策は対応の面でも法整備の面でも年々進んでいます。ストーカーの気配を感じた時は、一人で抱え込まず、すぐに市区町村や警察に相談することが大切です。
加害者に対して「この人は、私のやっていることを警察へ相談している。この人の背後には警察が付いているから、うかつなことは出来ないな。」と思わせるだけで、ほとんどのストーカーは初期段階で解消します。こじれる前に芽を摘み取りましょう。

ストーカー被害者への弁護士による対応

平成25年にストーカー行為等の規制等に関する法律(ストーカー規制法)が改正されました。新ストーカー規制法によって、規制されるストーカーの範囲が拡大されました。

ところで、つきまとい等ストーカーの被害を受けて困っている人が弁護士に相談したとき、弁護士からどのような対応措置をとってもらえるのでしょうか?

ストーカーにも色々の態様がありますから、それぞれの相談内容によって、弁護士がとる対応も違ってきますが、主な対応措置には、次のようなものがあります。

1.安全の確保に向けて

ストーカー被害を現に受けている被害者の多くは、速やかに身の安全を確保してもらいたいという、切実な状態にあります。
その場合、弁護士自身が被害者の安全を確保することはできません。ストーカーからの安全を支援する組織は警察ですから、弁護士は警察に対して支援を要請します。

具体的には、警察に電話して「ストーカー被害で支援が必要な○○○さんが署に行きますから、助けていただきたい。」と、事前の連絡をしておきます。
これによって、被害を受けている人が警察へ行ったとき、円滑に対応してもらえます。
被害を受けている人が一人で警察へ行くのが不安だとか、行く途中でストーカーに待ち伏せされる危険性があるなどの場合は、弁護士が一緒に警察署まで同行することもあります。

警察では、生活安全課が相談の窓口です。
警察は、防犯ブザーを貸してくれたり、一時避難の検討などの支援をしてくれます。
また、ストーカーに働きかけて警告を発してくれる場合もあります。
警察から警告を出してもらうためには、被害を申し出る必要があります。
そのため、ストーカーからのメールや着信履歴は消去しないで保存しておき、警察へ持参すれば証拠にもなり、被害状況の説明がスムーズに進みます。

2.ストーカーへの働きかけ

弁護士が被害者の代理人という立場で、ストーカーに対して書面や電話によって、ストーカー行為の中止を働きかけることもできます。
相手方のメールアドレスだけしか分からないときは、Eメールによることもあります。

書面で働きかけを行う場合は、ストーカー事案の特質から、インパクトが強い内容証明を避けて、配達された記録だけは残る特定記録便とか、もっと緩やかな方がいい場合は普通郵便によることもあります。

また、法律事務所の名前が印刷されている封筒を避け普通の白い封筒を使い、親展にします。
いずれの方法による場合でも、ストーカーをいたずらに刺激して紛争を拡大させないための配慮が必要ですから、伝える内容をできるだけ簡明にし、威圧的な表現を避けます。

3.示談交渉

弁護士がストーカーと直接会って、被害者のために慰謝料の額や今後の被害者への連絡とか接近の禁止、第三者への口外禁止などについて示談交渉を進めます。
交渉がまとまれば、示談書を作成し、示談金を授受します。
しかし、相手がストーカーですから、弁護士といえども、交渉のため面談する場所にも工夫が必要です。相手方が興奮して思わぬ行動に出るのを防ぐため、例えば弁護士会館の面談室とか、多くの人が出入りするホテルのラウンジなでを面談場所に指定する場合もあります。

4.法的な手続き

(1)民事訴訟
示談交渉がまとまらなかったとき、弁護士が被害者から委任を受けて、慰謝料請求などの訴え提起とか、調停の申し立てを行います。
その場合、相手方に被害者の居場所を知られたくないときは、法律事務所気付とする仮住所を記載して裁判所への申し立てを行うこともできます。また、民事記録非開示、開廷表や出廷カードの非開示措置を裁判所に申請すれば、記録閲覧等を制限してもらうことができます。

(2)刑事事件
弁護士は捜査機関ではないので、弁護士が刑事事件を捜査することはありません。
弁護士としては、被害者の依頼を受けて被害届、告訴状を作成し提出します。その後、警察や検察庁に被害者が出頭する際に同行して被害者の不安を和らげ、安心して被害状況を供述できるようにし、関連する証拠の提出などを支援します。